山城町西宇の伝説
岩本神社
【七人塚の大蛇】
昔、西宇家の人達が異様な気配を感じ雨戸を開けると大蛇が岩本神社前の大岩を7巻半まいてさらに長々と胴を伸ばした様相で西宇家に頭を向け狙いをつけていた。
そこへ駆けつけた7人の祈祷師が祈り殺し、巻き付いた大蛇を1巻づつ切り落とした。
7人塚はこの7人の祈祷師の墓と云われている。岩本神社の門前にある大岩の裏側に、かつて山石を1.5mほど積み上げて祀られた塚だったが養魚場の工事を行ったため今はもうない。
またこの大蛇退治には大津の土橋家の者が弓をひいて退治したという説もある。
【歩危の山爺】
大歩危の山に一人の大男が現れた。姿形はあまり常人と違わないがとにかく馬鹿力を持つ男で水無集落に現れては村人を苦しめた。
田畑を荒らし家畜を盗みついには6人の村人と4匹の犬が犠牲になった。
そこへ讃州(讃岐)の山伏が来て山爺退治を引き受けた。
山伏は村の者に川の白い丸石を集めさせ、それに似た白団子を作らせ石と混ぜそれを背にすると歩危の山に分け入って行った。その夜は山鳴りと地響きが続き一夜明けて村の者が様子を見に行くと岩陰に焼石で喉を真っ赤に焼き抜かれて息絶えた山爺と側に倒れて死んでいる山伏の姿があった。
村人は山爺と山伏の遺体を同じ塚に葬り弔ったと言う。この塚は今でも残されている。
【手白狸】
小歩危の旧道に出た両手の白い狸。この狸が手を挙げると真っ直ぐ歩いていた者が急に向きを変え今来た道を引き返して行く。
郵便制度ができた明治の頃、郵便箱をかついだ郵便夫さんが小歩危道へさしかかると古木の下で前足の白い狸がヒョイと手を挙げると郵便さんはクルリと向きを変えて今来た道を逆戻りしてしまう。
正気付いて戻るとまた手の白い狸が手を挙げて郵便さんは逆戻り、こんなことを一晩中繰り返したそうだ。
【姥がえし】
大歩危の旧道の対岸の大岸壁を「姥返し」と呼んでいた。
子供たちが対岸に向かって
「姥おるか!」
と呼びかけると
「姥おるか!」
と、こだまする。しかし時々
「姥おるぞ!」
と聞こえた。
子供たちは
「おった、おった、姥おったぞ!」
と言って喜んだ。
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